ちょっと前まで日本には工業デザインという発想が存在しなかった。いまでもかな? まともな工業デザイナーがまともな意見を言い、まともなことをしようとしても、会議でつぶされる。 まともな工業デザイナーは「会議ばかりやっているセンスのかけらもない奴ら」に愛想をつかし会社を辞める。 工業デザインを志してジョナサン・アイヴのような仕事ができる確率と、 テニスを志してアンドレ・アガシになれる確率はどちらが低いだろう。

センスの無い奴らが退職し、センスのある奴らが工業デザインの力と自由をやっと持てたとき、すでに市場は滅んでいた。遅すぎたのだ。

センスの無い連中で会議ばかりやってる民主主義が、優秀な垂直統合型の貴族帝国主義に負けるという構図が見える。 デジャブーか。

普通のアンプの最後の砦が着実に陥落していく。アンプの良心的メーカーであるアーカムとプライマーは日本での橋頭堡を失った。 今時はピュアオーディオに手を出すよりパイオニアのブルーレイプレーヤーとAVアンプを選んで HDMI を使うのが無難かもしれない。趣味の時代は終わった。 ロマンが無い。おしゃれじゃない。 インフラの普及としてのホームシアターの方向は正義かもしれない。 普通のホームシアターであればクラシック音楽のCDを再生しても悲しくなることはない。 クラシック音楽普及活動としてはなにもないよりましだ。 ピュアオーディオが滅んだ後をホームシアターが救うのか。 インフラの整備がどんな形であれ成されればそれでいい。

普通のアンプが消えていく。 本物は少し残るだろう。 トロイダルトランスにバイポーラトランジスタのSEPPで出力50Wくらいの普通のアンプなら5万円くらいで出来てしまう。 売るとしたら10万円くらいになる。作れるはずなのだが商売にならない。 売っても儲けはないし、数が出るわけでもない。 だれもアンプなんか求めていない。 だれもアンプなんか作らなくなる。 じゃあ自分で作ればいい。 壊れても自分で直せるようになればいい。 壊れるところなんて数百円のコンデンサーと抵抗と決まっている。 良いトロイダルトランスは半永久的に使える。 設計だってオーソドックスな回路を普通に採用すればいい。 アンプの性能はトロイダルトランスとコンデンサーの品質で9割決まる。 回路とかトランジスタなんてどうでもいいのだ。 トランジスタなんてただのスイッチだ。 音はトランスとコンデンサーで決まる。

ジャンクなアンプがある。 トランスはトロイダルを使っているのだが、筐体と回路とパーツがでたらめで、使い物にならない。 トロイダルトランスとMOS-FETのSEPPの組み合わせにさえすればいいアンプになると思い込んだド素人の某社が作ったもの。 回路はそのへんの大学生にバイト代だけで書かせたのかもしれない。 なんでオリジナルを設計した技術者を探してコンタクトして仕事を依頼しないのか。 自分たちで作れるなんて思うところがまったくアンプ設計のド素人ならではだ。 このアンプは捨てるにはもったいない。 筐体は材質が最悪だ。シャーシの構造はオリジナルの構造を踏襲しようとしてはいるようだ。 そこがオリジナルの核心ではある。 このシャーシはApple のアルミユニボディと発想がまったく同じであり独創的で合理的でまったくもってスマートなのだ。 Apple のユニボディの登場よりはるか昔のアンプに、すでにまったく同じ発想があったのだ。 トランスの素性は悪そうだが一応トロイダルだ。 トロイダルといってもピンからキリまである。 トロイダルであればなんでもいいわけではない。 よい産地がある。 アイルランドのある会社のつくっていたトロイダルは非常に優れていた。 だめなトロイダルは材質がデタラメだし、巻きもグスグスで、音が悪い。 なんちゃってトロイダルといった趣である。 このジャンクなアンプは、回路と基盤だけ自作して筐体とトランスを生かしたモディファイ機をつくるつもりで捨てずに置かれている。

topic: audio
first posted: 2011-03-01 21:45:55
last modified: 2011-03-02 02:37:11